豪州のグリーンスライド 気候災害の波が緑の党&労働党を押し上げ石炭推進政権を倒す
☆学生字幕翻訳コンテスト2023の授賞作品です
オーストラリアでは2022年5月21日に行われた総選挙で労働党が過半数の議席を獲得し、10年近く続いた保守派政権に終止符が打たれました。主な争点は気候変動でした。新首相に選ばれたのは、中道左派の労働党のアンソニー・アルバニージ党首。2018年から首相を務め石炭産業を推進してきた右派のスコット・モリソン自由党党首は敗退しました。有権者の支持は圧倒的に気候対策強化を訴える候補者に集まり、労働党が議会の最大勢力となりました。
注目されるのは、緑の党や「ティール(青緑色)」と呼ばれる環境系の若手無所属議員たちが大きく議席を伸ばしたことです。保守の牙城とされてきた議席が6つもティールの女性議員たちに奪われる、「グリーンスライド」と呼ばれる政界の地殻変動が起こりました。
この背景には、前回の総選挙(2019年)のすぐ後に起きた空前の森林火災の影響があります。森林の2割が消失し、何千人もが焼け出されるという甚大な被害が出ました。その後の洪水の影響などもあり、2022年になってもまだ9割の人々が避難生活を送っています。オーストラリアは気候変動の影響を真っ先に受ける地域であることが痛感され、気候対策が選挙の最大の争点となったのです。
世界最大の石炭輸出国であるオーストラリアが気候対策を重視して化石燃料からクリーンエネルギーへの転嫁に舵をきったことは、世界全体に大きな影響を与えるでしょう。オーストラリアの現状について、メルボルン大学教授の気候科学者で、活動家、著述家でもあるティム・フラナリー氏の話を聞きます。(中野真紀子)
*ゲスト:ティム・フラナリー(Tim Flannery)オーストラリアの気候科学の第一人者、活動家で、同国における気候危機問題に関する主要な著述家のひとり
字幕翻訳:ロブソン麗奈 (クイーンズランド大学通訳翻訳修士課程(MATI)2年 受賞時)
校正:中野真紀子