イザベル・ウィルカーソン:米国を作り変えた黒人の大移動

2010/9/29(Wed)
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19分

1915年から1970年代半ばの約60年間に約6百万人の黒人が、米国の南部を離れて北部や西部に移住しました。20世紀はじめには、米国の黒人の約9割が南部で暮らしていたのに、大移住が終わる頃には南部に残っていた黒人は半数近くに減っていたといわれます。移住は公民権運動を生む土壌を作り、米国の政治と社会を変え、エキサイティングな都市の黒人文化を生み、世界的にも大きな影響が伝わっていきました。一国を変えた激動の大移動を3人の実在の人物を通してまるで大河ドラマのように生々しく描きつつ、社会と時代背景を際だたせる。イザベル・ウィルカーソンの新著『別の太陽のぬくもり("The Warmth of Other Suns”)は水際だった筆力とダイナミックな構成力で大きな話題を呼び、2010年度全米批評家協会賞(ノンフィクション部門)を受賞。2010年の黒人関連ノンフィクションの最大の収穫のひとつと言われています。

自由を求めての黒人たちの移動は、3つの道をたどりました。1つめは東海岸ぞいに北上しNYやワシントンに行く流れ、2つめはミシシッピ州などから中西部のシカゴへ、3つめはルイジアナなどから西に向かいロスやシアトルへ。生まれ故郷を捨てての帰り道のない旅は、黒人差別制度でがんじがらめだった南部からの政治亡命を意味しました。大それた夢をみたわけじゃない。ただ思うままに町を歩ける自由、そして自分の資格に見合った稼ぎ口がほしかっただけ。身ひとつを支えにした未知の世界への大きな賭けは、南部の黒人たちにとって自らの手で奴隷解放宣言を実現する、ひとりひとりの独立宣言だったのだと、ウィルカーソンは語ります。(大竹)

*参照リンク:イザベル・ウィルカーソンとの対話 「タビス・スマイリー」ショーより(日本語)

*イザベル・ウィルカーソン(Isabel Wilkerson):ジャーナリスト。ニューヨークタイムズ紙のシカゴ支局長時代、黒人女性として初めてジャーナリスト部門でピュリッツァ賞を受賞した。ボストン大学ジャーナリズム学教授。

Credits: 

字幕翻訳:川上奈緒子/校正:大竹秀子/全体監修:中野真紀子・桜井まり子