サイファーパンクス ジュリアン・アサンジが語るネットの自由と未来 (後半)
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エクアドルに政治亡命を認められながらロンドンの大使館から一歩も出られないジュリアン・アサンジに、昨年末に行った長編インタビューです。クレジット会社との訴訟やブラッドリー・マニング裁判などについてのアップデートに加え、最近アサンジが他の大物ハッカーたちと共著で出版した電子本『サイファーパンクス』(Cypherpunks: Freedom and the Future of the Internet)の内容が目玉です。インターネットが自由と民主主義の拡大をもたらす夢のツールから一転して、国家が市民の一挙一動を掌握しプライバシーが完全に消滅する究極の監視国家をもたらす悪夢の発明に変質しつつある今、私たちはどのように個人の独立を守ることができるのか? 個人と国家のあいだのまったく新しい関係とは?そこで暗号化が果たす役割は?
後半では、獄中のジェレミー・ハモンドと彼がハックしたとされる「ストラトフォー・ファイル」の重要性について説明しています。マニングが暴露した米軍や国務省の内部文書と並んで、ウィキリークスで公開されている中でも特に重大な機密文書群が、米国の軍や政府に大きな影響力を行使する民間諜報サービス会社ストラトフォーの内部メールです。諜報活動まで民営化される新自由主義の時代に、国家機密がいかに私企業の利益と絡み合っているのかを浮き彫りにする資料です。こうした政府の実態は、もはや大手メディアによる暴露を期待することはできません。内部告発こそが私たちに真実を知らせてくれるのですが、米国政府はスパイ罪や反逆罪などとを使って脅しています。ハモンドやマニングのような獄中の内部告発者たちの身の上にもっと注目するようアサンジは促します。マニングは今年もノーベル平和賞にノミネートされていますが、こういう動きを支持していきたいものです。
アサンジは大使館で無駄に過ごしているわけではないようです。最近「キッシンジャー・ケーブル」と呼ばれる1973年から76年までの米国の外交公電や諜報機関の報告書など170万点をウィキリークスにアップしています。これはリークではなく国立公文書記録管理局(NARA)に眠っていた機密期限の過ぎた公文書です。本来は10年以上前に公開されているはずなのに、ずっと放置されたままだったものをウィキリークスが入手し、インデックスをつけてデータベース化して、誰でもネットから閲覧検索できるようにしたものです。クリントン時代の末期から米国ではreclassification(再分類)プログラムとよばれる機密解除文書の再機密化が進んでいますが、このような事実に注目をひきつけ、秘密主義を強める米国政府に対抗する試みとして、大喝采を贈りたいものです。
ちなみに1973年はチリのクーデターが起きた年です。当時の米国の外交を仕切ったヘンリー・キッシンジャー(ノーベル平和賞を受賞しています)の戦争犯罪がいよいよ明らかにされるのかも。(中野真紀子)
・このセグメントは、DVD第24巻「サイバー空間の軍事化」に収録しています。最近、下院を通過したCISPA法案を巡るDVD限定トピックスもあり。ぜひ、ご購入ください。
Cypher Punks→ http://www.orbooks.com/catalog/cypherpunks/
Kissinger Cables→http://www.orbooks.com/catalog/cypherpunks/
*ジュリアン・アサンジ(Julian Assange) ウィキリークス創始者、編集長。現在ロンドンのエクアドル大使館に政治亡命中。新刊の共著はCypherpunks: Freedom and the Future of the Internet
字幕翻訳:山本義行/全体監修:中野真紀子