グレン・グリーンウォルド: パリ襲撃を口実に市民監視を正当化する政府、戦争を煽る「従順」なメディアとムスリムへの卑劣な責任転嫁
11月13日金曜日に起きたパリの襲撃で、世界が一気にキナ臭くなってきました。フランスのムスリムたちは1月のシャルリエブド襲撃事件に続いて再びイスラム憎悪の高まりに怯えています。各国で移民への反感も露骨になってきました。フランスでは非常事態が宣言され、デモも禁止されています。欧米諸国はここぞとばかりに防衛と監視の体制を強化し、イスラム国に空爆で報復していますが、そんなことではテロ根絶どころか民間人の犠牲がテロに拍車をかけるだけで、喜ぶのは軍需産業だけです。グレン・グリーンウォルドは、現在の異様に好戦的な空気は2003年にブッシュ政権がイラクに侵攻したとき以来のものだと懸念します。
フランスやベルギーの当局が国家権力の拡大に走る中、米国の諜報機関や治安関連のトップもこの事件に便乗して国民監視の正当化を図っています。コーミーFBI長官は、スマートフォンの暗号化情報にアクセスする権限が必要だと言い、ブレナンCIA長官は、NSAの監視体制が暴露された為にテロリストの発見が困難になったと言いました。元CIA長官のジェイムズ・ウルジーにいたっては、エドワード・スノーデンの手はパリ襲撃の犠牲者の血で汚れているとまで言い放ちます。
このような政府高官の放言を無批判に報道し、イスラム憎悪と戦争拡大を煽る米国のメディアの体質、「イスラム国」の出現と勢力拡大に最も大きな責任のある米国の侵略と中東政策、そして軍事行動の拡大で、暴利をむさぼるのは誰なのかを、グリーンウォルドが明快に語ります。パリ襲撃後の初取引となる週明けの株式市場では、低調な市場のなかでロッキードやジェネラル・ダイナミクスやレイセオンやタレス・グループのような軍需関連株だけがほぼ垂直に値を上げました。投資家は、欧米諸国の空爆拡大によって大量の税金が彼らの懐に入ることをよく知っているのです。テロとの戦争の勝利者は、欧米の国民でも、中東の国民でもなく、暴利をむさぼる軍産複合体だとグリーンウォルドは指摘します。(中野真紀子)
☆ちょうどこの日は、伝説のユタ州の労働組合運動家ジョー・ヒルが冤罪で処刑されてから100年目でした。10分すぎあたりの休憩で「ジョー・ヒルのバラード」がかかります。名曲です。
グレン・グリーンウォルド(Glenn Greenwald):ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト。オンライン調査報道サイト『インターセプト』の共同創設者
字幕翻訳:中野真紀子