グアテマラ大統領選でアルバロ・コロンが当選 虐殺に関与した陸軍大将を破っての勝利に 先住民らも喜びの声

2007/11/6(Tue)
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 2007年11月、グアテマラで、53年ぶりに左派寄りの大統領が誕生しました。大方の予想では、軍部出身のペレス・モリーナ候補が勝利し、1980年代の圧制に戻るだろうということでしたが、地方票を集めたアルバロ・コロン候補が、貧困の撲滅を掲げ、53%の得票率で当選したのです。

 グアテマラでは1954年に、不平等な土地所有を改革しようとしたアルベンツ大統領が、CIAの後ろ盾を受けたグアテマラ軍によって引き摺り下ろされて以来、ずっと親米政権が国を牛耳っていました。その間には、36年間続いた内戦で20万人もの一般人が殺害され、言論と自由の弾圧が激しく、アメリカとその利権に逆らうものは、常に命を狙われてきました。だから、今回も親米派のペレス・モリーナ候補の方が有力視されていたのです。

 ペレス・モリーナ候補が卒業したスクール・オブ・ジ・アメリカス(米州軍事学校)は、米軍がラテン・アメリカ諸国の軍隊に対して、拷問や殺害の技術を訓練する悪名高い施設。ジョージア州のフォートベニングにあり、現在は「国際協力のための西半球研究所」と改名していますが、実際は、米国とその利権を守るための拷問・暗殺学校のようなもの。軍部による5万5千件もの人権侵害事件を告発しようとしたヘラルディ司祭が、1998年に暗殺された事件は、ペレス・モリーナが関与していたという証拠が最近見つかっています。

 都市部のメディアは利潤追求型なので、一部富裕層の利潤を守ってくれるペレス・モリーナ候補を応援していたため、この疑惑を一切報道しませんでした。でも、選挙前にデモクラシー・ナウ!では報道され、インターネットでその映像を拾った若者たちが、内容を書きおこしてコピーを大量につくり、広く配布して反ペレス・モリーナの一つの力にしたようです。 押さえつけられ続けた地方の先住民族も一致団結してコロン候補を応援し、主流メディアに勝ったという点で、グアテマラの歴史でも特に大きな意味をもつ選挙だったと言えましょう。(古山)

*アルバロ・コロン大統領 (Guatemala President-Elect Alvaro Colom) 貧困撲滅のための政策を訴えて当選したグアテマラの新大統領
*オットー・ペレス・モリーナ将軍 (Gen. Otto Perez Molina)グアテマラ大統領選に立候補し、投票日直前までは優勢だと言われながら、当日は敗北した。犯罪対策のために警察を拡張し、軍隊をも出動させることを公約に掲げていた。
*フランシスコ・ゴールドマン (Francisco Goldman)在米の著名なグアテマラ人小説家。著書にThe Long Night of White Chickens (『白い鶏の長い夜』)などがある。近著は初めてのノン・フィクション作品The Art of Political Murder: Who Killed the Bishop?(『政治殺人のからくり:誰が司教を殺したのか?』)  

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翻訳字幕:田中 泉
全体監修:古山葉子