「冬の兵士」集会:イラク・アフガニスタンの帰還兵が戦争の残虐さを証言 1
2008年3月半ば、米国の首都ワシントンDC郊外にあるシルバースプリング市で、米国史上2度目の「冬の兵士」(Winter Soldier) 証言集会が開かれました。主流メディアのほとんどが無視したこの集会の様子は、もっぱらデモクラシー・ナウ!や他の独立系公共メディアで報道されました。
最初の「冬の兵士」集会が開催されたのは1971年のことでした。デトロイトで行われたこの集会では、ベトナム帰還兵たちが南ベトナムにおける米軍の戦争犯罪を告発する証言を行ないました。この伝統を受け継ぎ、今回はイラクとアフガニスタンからの帰還兵数百人が、米軍による戦争犯罪の実態を告発しました。「冬の兵士」の名前は、米国独立戦争の思想家トーマス・ペインが、過酷な軍務を嫌って脱走した兵士たちを「夏の兵士」と呼んだのにちなみます。
71年の「冬の兵士」証言集会には、2004年の民主党大統領候補となったジョン・ケリー上院議員もかかわり、直後に議会の公聴会で証言しています。番組では1971年の証言集会の生々しい発言映像も交えながら、今回の「冬の兵士」集会を組織した反戦イラク帰還兵の会(Iraq Veterans Against the War=IVAW)会長カミーロ・メヒア(Camilo Mejia)氏の話をききます。
イラク戦争に参加したメヒア氏は、一時帰国の後に戦線に復帰するのを拒み、軍法会議にかけられて一年の禁固刑に処せられました。除隊後Road from ar Ramadi(『ラマディからの道』)を書きました。
一方、元ベトナム帰還兵でSoldiers in Revolt: GI Resistance During the Vietnam War(『兵士たちの反逆-ベトナム戦争中の軍人による抵抗』)の著者として知られるノートルダム大学の平和学教授デイビッド・コートライト氏から、71年の「冬の兵士」集会の歴史的意義と、今回の「冬の兵士」の位置づけについてお話をうかがいます。
その後は、3日間にわたった証言集会から、4人の証言を選んでお届けします。(中野)
☆ 今回の掲載はTUPとの連携で実現しました。兵士たちの証言は、TUP通信で全訳が配信されていますので、ぜひご覧下さい。また、『論座』7月号でも紹介しました。
☆ 追加情報 TUPの翻訳は、2009年8月6日に岩波書店から「冬の兵士 イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実」として出版されます。これを機会にTUPのサイトも刷新されました。詳しくはそちらでご確認ください。
*カミーロ・メヒア(Camilo Mejia) 元二等軍曹。フロリダ州兵として2003年に6ヶ月間イラクに派遣された。一時休暇の後に戦線復帰を拒み、軍法会議にかけられた。一年近くの禁固刑を終え、現在は「反戦イラク帰還兵の会」の会長。
*デイビッド・コートライト(David Cortright) ベトナム帰還兵で、Soldiers in Revolt: GI Resistance During the Vietnam War (『兵士の反乱 ベトナム戦争中の米兵の抵抗』)を書いた。ノートルダム大学の平和学教授
翻訳:田中泉
校正:斉木裕明
全体監修:中野真紀子