「米国覇権の経由地パキスタン」タリク・アリ
2008年9月15日パキスタンの国境警備軍が、アフガニスタンからパキスタン領内に侵入しようとした米軍を撃退したと報じられています。これ以前にも米軍の越境攻撃でパキスタンの村人が殺害されており、数週間にわたり空爆も続いており、パキスタン国内には米軍への敵意が高まっていました。パキスタンと米国の危険をはらんだ関係を新たな視点で描いた新作『対決:米国覇権の経由地パキスタン』を発表したタリク・アリに話を聞きます。
パキスタンへの越境攻撃をめぐってはブッシュ政権内部でも意見の対立が大きく、国防省関係などからは反米感情をあおるだけで逆効果であるとの意見も出ていたようです。そもそも米軍がパキスタンに戦争を拡大する本当の理由は、アフガニスタン占領の失敗を正当化するためなのだとアリは言います。その結果がパキスタン軍の怒りを買うことになり、今回のような深刻な事態を招いたのだと。
オバマ次期大統領は、イラクからの早期撤退を表明しましたが、その一方でアフガニスタンに対しては戦力増強を表明しています。そのような措置は、はたしてどのような結果を招くのでしょうか。(中野)
* タリク・アリ(Tariq Ali) 英領インド(現パキスタン)に生まれ、イギリスで教育を受けた著名な評論家、作家、活動家。ニューレフト・レビュー誌の編集者の1人。1960年代の自伝Street Fighting Years: An Autobiography of the Sixties(『ストリート・ファイティング・イヤーズ』)など著書多数。2008年9月に新刊The Duel: Pakistan on the Flight Path of American Power(『対決:米国覇権の経由地パキスタン』)で、パキスタンと米国の問題に満ちた関係に新たな視点を提供した。
字幕翻訳:桜井まり子/校正・全体監修:中野真紀子