ガザ攻撃時のイスラエルの戦争犯罪 国連調査で明らかに
イスラエルがガザ地区への攻撃を始めてからちょうど1年になります。3週間におよぶすさまじい爆撃でガザは瓦礫の山となり、1400人以上が殺されました。その3分の1は女性と子供です。一般市民を標的にするイスラエルに対し、これまでになく激しい非難が国際社会に高まりました。ガザ攻撃関連の動画はこのページで
この事件を境に、イスラエルに対する国際世論の認識が大きく変わったという見方もあります。ガザの人々も、今度こそは国際社会がありのままの事実を認め、公正な処置をとってくれると期待していました。しかし、1年後の今になってもイスラエルによる非人道的なガザの封鎖は、国際社会の協力によって継続しています。崩れた建物は放置され、インフラも医療も経済も崩壊したままです。国際世論が変わり目を迎えたとしても、それはまだ底流にとどまっているようです。
2009年9月、リチャード・ゴールドストーン判事が率いる国連の事実調査使節団が、3週間にわたるガザ攻撃における戦争犯罪について調査結果をまとめました。ゴールドストーン報告書は、イスラエル軍が民間人を故意に標的にしたことは戦争犯罪にあたり、おそらくは人道に対する罪にもなると結論しています。また、ハマス側の違反についても記しています。そして国連安全保障理事会はイスラエルとハマスの双方に対し、この嫌疑に関する徹底した自己調査に3ヶ月以内にとりかかるよう求め、従わない場合には半年以内に国際刑事裁判所に提訴すべきであると勧告しています。イスラエルの政策をきびしく批判してきた政治学者ノーマン・フィンケルスタインに、この報告書の重要性と限界を聞きます。(中野)
ガザ攻撃でのイスラエルの戦争犯罪についてはすでにアムネスティやHRWなどの国際人権団体がいくつも報告を出していますが、今回は国連による調査であり、イスラエル側が刑事責任を問われる可能性もあります。このような画期的報告が出た背景には、世界に散らばるユダヤ人のあいだのイスラエル離れがあるとフィンケルスタインは指摘します。
ゴールドストーン判事は長年にわたるイスラエル支持者であり、ハマスの戦争犯罪についても調査するという条件で団長を引き受けた人物です。報告書は確かに双方に戦争犯罪があったとしていますが、イスラエルに裂かれたページが全体の9割を占めています。フィンケルスタインによれば、ゴールドストーン判事のような人がイスラエルの政策をはっきり断罪したことは、これまで無条件の支持を与えてきたユダヤ系リベラリストたちが、イスラエルに背を向け始めたことのしるしです。
とはいえ報告書には問題点もあります。イスラエルのガザ攻撃は「戦争」であったという前提のもとに、戦時国際法にそって報告をまとめていることです。ガザに侵攻したイスラエル兵士の多くがパレスチナ側の戦士に遭遇したことも、戦闘になったこともないと証言しています。これは戦争ではなく大虐殺でした。報告書は、民間人の大量虐殺を交戦法規の用語で記述しているのです。
★ DVD 2009年度 第3巻 「パレスチナ」に収録
ノーマン・フィンケルスタイン Norman Finkelstein, 政治学者。イスラエルはホロコースト犠牲者の立場を濫用していると批判してヨーロッパで話題になった『ホロコースト産業』のほか、『イスラエル擁護論批判』、 Image and Reality of the Israel-Palestine Conflict (『イスラエル=パレスチナ紛争のイメージと現実』)などの著書がある。ガザ攻撃に関する新著を、攻撃開始から一周年の2009年12月27日に発売する。
字幕翻訳:小椋優子
校正・全体監修:中野真紀子・高田絵里