酷暑の地球 今後50年の生活
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マーク・ハーツガードは1988年以降に生まれた世代を「酷暑の世代」(Generation Hot)と呼び、世界で20億人いるというこの世代が、灼熱の地球で生涯をすごさねばならない温暖化の被害者だといいます。
1988年は、アメリカ航空宇宙局NASAのジェームス・ハンセン博士が、米議会で初めて地球温暖化が進行していると証言した年です。翌年エクソンなどの石油業界は地球気候連合(Global Climate Coalition)を設立、CO2排出規制に反対するロビー活動を開始し、地球温暖化を否定する論調が米国で増えていきました。1988年以来、20年以上がすぎ「異論を唱えるのは、FOXニュースか下院の共和党だけです」とハーツガードは言います。
2011年4月にも、共和党が多数を占める米下院が、温室効果ガスを規制する権限は米環境保護庁にないとする法案を通過させたほか(上院で否決)、2012年度の気候変動予算をカットするなどオバマ大統領の環境政策の巻き戻しを図っています。 しかし地球温暖化は科学者の世界ではもう決着がついているとハーツガードは言います。
経済学者ポール・クルーグマンは、ニューヨーク・タイムズ紙の2006年のコラムで「地球は温暖化しており、人間の活動が原因だとする点に科学の世界では圧倒的なコンセンサスがある。サイエンス誌は2004年、科学専門誌で専門家の検証をうけている気候変動に関する論文928本を調べた結果、『この合意に反対を唱える論文はひとつもなかったことが判明した』とする記事を掲載した」と書いています。
また、石炭をもやす火力発電に代わるとして原子力発電を支持する科学者や環境活動家は多くいますが、原発推進は気候変動を悪化させるとハーツガードは言います。原子力発電所1基の建設費用をエネルギー効率化に使えば、温室効果ガスは7倍削減できるとし、化石燃料から脱却しようと思うなら、最大効果が得られるものに投資すべきだとしています。 その例としてハーツガードは風力発電を挙げ、米国の風力発電の原動力となっているのが意外にもテキサス州だといいます。米国風力エネルギー協会(American Wind Energy Association)の2010年次報告によると、テキサス州は2位のアイオワ州を大きく引き離し約1万メガワットを発電、2009年には米国が世界の風力発電トップに躍り出ています。
セグメントの最後には、ハーツガードが「酷暑の世代」の代表と共に、気候変動否定派の代表とされるジェームス・インホーフ議員(共和党)に直接「なぜ否定するのか」と迫ります。2003年の議会で「破滅的な地球温暖化の脅威説は、アメリカ人に対してなされた最大のインチキ」と演説し、2005年の議会演説でも「温暖化人為説は宗教的信念の類」、「いずれは動かぬ事実とデータ、科学的原理に忠実なまじめな科学者によって決着がつくであろう」と述べたインホーフ議員が、「科学には異論がある」と繰り返します。(桜井まり子)
*マーク・ハーツガード(Mark Hertsgaard):20年以上気候変動をカバーしてきた調査報道記者。ネイション誌の環境問題特派員。新著は Hot: Living Through the Next Fifty Years on Earth(『酷暑の地球:今後50年の地球生活』)
字幕・ウェブ作成:桜井まり子/全体監修:中野真紀子