ホウラ虐殺で高まる軍事介入の要請に警鐘 シリア内乱の危機
5月25日シリア中部ホムス近郊のホウラで100人以上の住民が虐殺された事件を受け、米国や英国の11カ国がシリアから外交官を退去させました。被害者には子供も多く含まれ、国連・アラブ連盟合同特使としてシリアの停戦調停交渉にあたっているコフィ・アナン前国連事務総長は、「シリアは転換点を迎えた」と発言しました。この事件が報道されると、さらなる虐殺を防げと軍事介入を求める声に勢いがつきましたが、最近現地から戻った中東ジャーナリストのチャールズ・グラスは、現地の人々は大半が武力介入に反対していると、慎重な対応を求めています。
米軍上層部も認めるように、軍事介入の結果は予測できません。外国勢力の侵略によってシリア人が団結を強める可能性もありますが、シリアの住民は言語や宗教が複雑に入り組んでおり、イラクのように民族や宗派に分かれて互いを殺しあう事態にも発展しかねません。また、反政府派の拠点となっている隣国トルコとの関係も懸念されます。このような状況で国際社会が専念すべきは、最大限の外交圧力を行使して政府側と反政府側を無理やりにでも停戦交渉の席につかせることだとグラスは言います。(中野真紀子)
☆なお、ホウラの虐殺については、政府側がやったとする英米メディアの報道には疑問符がついており、アサド反対派の犯行とするドイツのFAZ紙の報道など複数の主張があり、きちんとした検証が必要でしょう。
参考サイト:http://www.informationclearinghouse.info/article31571.htm
*チャールズ・グラス(Charles Glass)元ABCニュースの中東特派員。最近シリアを訪れた。著書Tribes with Flagsが今年復刊された。最新記事はthe New York Review of Books に掲載された "Syria: The Citadel and the War."
字幕翻訳:大竹秀子/全体監修:中野真紀子