NY市警に沈黙の抗議 マイノリティ市民の自由を奪う路上尋問
仕事や通学、何かの用事ででかけたり友人を訪ねたりの途上。そういえば、「ベンチにすわって星をながめていただけなのに」という若者の話も聞いたことがあります。突然、警官が現れて、お前は誰だ、ここで何をしていると問いただされる。ボディチェックされたり、拳銃をつきつけられることすら。なぜ?理由は、おそらくあなたが黒人だったりラティーノだったりするから。それだけで十分、あやしげな奴なのです。2011年、「ストップ・アンド・フリスク(stop-and-frisk)」と呼ばれるNY市警の「路上尋問」活動は約70万回、実施されました。
ニューヨーク人権擁護連盟(New York Civil Liberties Union)によると、呼び止められた人々のうち87%が黒人とラティーノ。市長は、この活動の強化で犯罪率が下がったと主張していますが、犯罪率はこんな活動をしていない他の市でも下がっており、この活動の成果と言い切れる根拠はありません。実際、逮捕につながった路上尋問は、1割にも達しません。9割以上の人たちは、余計な時間を取られるだけでなく「容疑者扱い」に悔しくいやーな思いをさせられます。また、警察との接触は、下手に抵抗すれば逮捕やもっと悪い事態もひき起こしかねず、特に路上尋問の対象になりそうなマイノリティの若者は、エリアによっては外出するのが恐い、犯罪と同じくらい、いやそれ以上に警察が恐い、家族もその子が無事帰ってくるまで心配でたまらない、という事態が起きています。
2012年、「父の日」にあたる日曜日に、NYで「路上尋問」に抗議する「沈黙の行進」が行われ、ハーレムからブルームバーグ市長宅まで数千人が行進を行いました。沈黙の行進は、1917年にやはりNYで行われた行進になぞらえたもので、この時には、労働争議にからんでイリノイ州での暴動で黒人が大勢、殺された事件(被害者は40人から250人と言われています)が引き金になりました。
長年、おこなれてきた「路上尋問」に、あきらめずにやっと大勢が声をあげた。行進の現場から、参加者たちの生の声をお聞きください。(大竹秀子)
*カルメン・ペレス(Carmen Perez):11歳の時以来、何度も路上尋問にあっている。路上尋問反対運動のオーガナイザー。
*アントニオ・メレンデス(Antonio Melendez):労働運動青年部門のオーガナイザー、路上尋問の被害者。
*ディック・グレゴリー(Dick Gregory):コメディアン、公民権運動の活動家としても知られる。
*ジョン・コビントン・ジュニア(John Covington Jr.):ベトナム帰還兵、元海兵隊員、弁護士、牧師
字幕翻訳:川上奈緒子/校正/大竹秀子/Web作成:桜井まり子