移民法改革案「法律はいつも細部にワナがある」
二期目のオバマ政権で動き始めた移民改革法案 についてフアン・ゴンザレスが解説します。
2013年5月末現在、移民改革法案は上院司法員会を通過、6月から上院本会議で審議が始まる見込みです。法案は野党共和党が要求していた国境警備の強化を図る一方、国内の無届移民で技術をもつ人々にビザの枠を拡大し、2011年12月以前に入国した移民については一定の条件の元に罰金を払えば「暫定的登録移民」(registered provisional immigrants)への道を拓くなど寛容策も盛り込まれたと報じられています。
しかし「暫定的登録移民」になることは、すでに米国内にいる無届移民にとって市民権を待つ列の最後尾に並ぶことだとゴンザレスは述べています。登録は、メキシコ国境の包括的警備の開始などの条件が付されており、最低でも10年間は宙に浮いた状態になるとされます。
ゴンザレスは、この法案は21世紀の米国のありようを問うものだと言います。国内1100万人とも言われる無届移民に対して先行き不透明なオプションを提示する一方、国境警備の強化を柱とする法案は、すでに米国にいる低賃金労働者は確保しつつ移民の流入を制御する、一石二鳥を狙った法案ではないでしょうか。
どのような改革案になるにせよ、そもそもなぜ中南米から人々が米国に来るのか、その原因を作ったのは米国自身ではないかというゴンザレスの指摘を再度、思い出す必要があります。(桜井まり子)
*フアン・ゴンザレス(Juan Gonzalez): デモクラシー・ナウ!の共同司会者でニューヨーク・デイリー・ニューズ紙のコラムニスト。Harvest of Empire: A History of Latinos in America(『帝国の収穫:米国のラティーノの歴史)著者。
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