金正恩との歴史的な首脳会談後トランプが朝鮮半島の「挑発的な」合同軍事演習を止めると約束

2018/6/12(Tue)
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2018年6月12日。史上初となる、現職アメリカ大統領と北朝鮮最高指導者との首脳会談がシンガポールで行われました。同年3月に突然発表された米朝会談開催でしたが、5月に中止の発表そしてまた開催の決定といった動きは目まぐるしく、当日トランプ大統領と金正恩委員長が並んで姿を現わすまで、会談が本当に実現するのか誰も確信を持つことはできませんでした。

会談後には米韓合同軍事演習の中止が発表され、米国が「一方的に譲歩した」と非難する声もありました。しかし、これまで北朝鮮が何度も中止を要請してきたにもかかわらず米韓が演習の規模を拡大し、その内容を「斬首作戦」という北朝鮮敵視丸出しのものにエスカレートさせてきたことは、結果的に北朝鮮を自衛のための核開発へと駆り立てました。トランプ大統領就任後、激しい言葉の応酬が米朝間で繰り広げられた時、北朝鮮が国営放送で「島根、広島、高知を通過してグアムに向けてミサイルを発射する」と脅迫めいた発言をしたのはちょうど1年前の2017年8月のことでした。米韓合同軍事演習で使用される戦略爆撃機がグアムの米軍基地から朝鮮半島に出撃することが、米朝会談後のトランプ大統領の記者会見でも言及されており、北朝鮮が昨年「グアム」という地名に込めたメッセージが改めて理解できます。

ゲストの極東問題専門家のティム・ショロック氏は今回の会談でトランプ大統領が米韓軍事演習を「挑発的」と表現したことに、「椅子から転げ落ちるほど」驚いたと言います。米韓合同軍事演習が挑発的だったことは、誰の目にも明らかだったことでしょう。挑発し脅すことが目的だったとしても、公式な発言では決して認めない − それが外交の「お作法」であるにもかかわらず、あっさりと「だって、挑発的だよね」と米国の大統領が認める、「王様は裸だ」と言ってしまった少年のように。ある意味爽快ともいえる発言でした。

一方米国内では、米朝会談の開催に反対する公開書簡を出す一部民主党議員や、「人権問題を取り上げなかった」ことばかりにこだわり会談の成果を認めないリベラル系メディアの報道などがありました。トランプ憎しのあまりなのか、東アジア情勢の大転換ともなり得る大局を見ようとせず自らの利益や関心に固執する姿勢には失望させられます。

世界中が米朝会談に釘付けとなり、日本でもほぼ一日中メディアはそれ一色でしたが、会談後の評価については「具体的な合意・成果なし」「試合はトランプ大統領の負け、金委員長の勝ち」といった否定的な論調がほとんどで、そのほかは共同声明文書にサインするときに使用したペンがどうだったなど、瑣末なネタをワイドショー的にとりあげるばかりでした。この動画では、間違いなく歴史的であった会談を独自の切り口で見せてくれます。とりわけ出色なのは、会談後の記者会見で、トランプ大統領が米韓合同軍事演習=「戦争ゲーム」について語る場面でしょう。危険だし、費用がかかるし、こんな状況で戦争ゲームを続けるべきではないというトランプの主張は非常に真っ当です。票欲しさに過激な主張を言い散らすキワモノ大統領ではなく、「まとも」な感覚を持つ人間としての一面が垣間見える数少ない映像だと言えるでしょう。

入国を試みた移民の親子を引き離すなど、国内では決して善政を施しているとは言い難いトランプ大統領ですが、ある程度現実味を帯びていた核戦争の危機から緊張緩和へと事態を動かしてくれたことは、隣国日本からすればありがたいとしか言いようがありません。実際に朝鮮半島で戦争が起きれば、どんな形であれ日本に甚大な被害が及ぶことは明らかだからです。

すべてはこの日に始まった − 2018年6月12日は世界に記憶される日になるのか。北朝鮮は核開発を続行している、年内に二度目の米朝会談があるかもしれない、などニュースは駆け巡っています。朝鮮半島情勢はまだまだ予断を許さない状況が続くことでしょう。(仲山さくら)

*ティム・ショロック(Tim Shorrock):ワシントン在住の調査報道ジャーナリスト。東京とソウルで育ち、1970年代から朝鮮半島における米国の役割について書いている。現在はネイション誌やソウルの挑戦調査調査報道センター(Korean Center for Investigative Journalism)の特派員を務める。

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字幕翻訳:デモクラシー防衛同盟
千野菜保子・仲山さくら・水谷香恵・山下仁美・山田奈津美・岩川明子
全体監修:中野真紀子