デモクラシー・ナウ!学生字幕翻訳コンテスト

審査員紹介


◆特別審査員◆

中野晃一(NAKANO Koichi):政治学
上智大学国際教養学部教授

東京都生まれ.東京大学,英オックスフォード大学卒業.米プリンストン大学大学院博士課程修了,PhD.著書に『右傾化する日本政治』『戦後日本の国家保守主義』,共著に『民主党政権失敗の検証』『グローバルな規範/ローカルな政治:民主主義のゆくえ』など.

グローバル時代と言われますが、メディア界でも大国や企業の論理が優先し、普通の人びとの声はかき消されがちなのが現実です。そのなかで非営利・独立を貫く「デモクラシー・ナウ!」はアメリカのみならず世界で広く信頼を得ています。その生きた情報を日本に伝えるために重要なのが字幕翻訳ですが、実際にチャレンジすることを通じて、グローバルな問題について理解を深め、英語運用能力に磨きをかけてみませんか?

長谷川ニナ(HASEGAWA Nina):比較文学・比較文化
上智大学外国語学部イスパニア語学科教授,グローバル・コンサーン研究所員

メキシコシティ生まれ.東京大学卒業.東京大学大学院博士課程満期退学. メキシコの印刷文化に関する論文多数. NHKラジオ「まいにちスペイン語」パートナー.

地球の裏側で何が起こっているか、ということは、一見、日本に住んでいる私たちには何の関係もないことのように思われます。しかし、歴史を丹念に見ていけば、けっしてそうではありません。世界はつながっていて、ある国での悲惨な出来事は、簡単に他の国でも起こりえるし、また、影響を及ぼしていくのです。例えば、いままで日本で軽視されてきた米国と第三世界とりわけラテンアメリカとの関係を注視することは、米国と日本の関係を理解するのにも役立ちます。そういう意味で、大手メディアでは取り上げられない、掘り下げられることのない視点からの報道と、それを翻訳して広く伝えることの意義を一緒に体感していきましょう。

◆審査員からひとこと◆

長沼美香子(NAGANUMA Mikako):通訳学・翻訳学,機能言語学
神戸市外国語大学英米学科教授

愛知県生まれ.広島大学卒業,広島大学大学院・豪マッコーリ大学大学院修士課程修了,東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了,博士(学術).「NHKニュースで英会話」の原稿執筆,共編著に『日本の翻訳論:アンソロジーと解題』,共訳書に『通訳学入門』『翻訳学入門』など.

このコンテストで使用される字幕シートでは、「字幕」にする前の翻訳プロセスを重視しています。そして、そのようなプロセスも審査の対象となり、地道なリサーチに基づいた内容理解が試されます。独立報道番組「デモクラシー・ナウ!」の字幕翻訳を通して、商業メディアとは異なる視点から情報の発信者になりませんか。若い知的探究心に大いに期待しています。

山田優(YAMADA Masaru):翻訳学・通訳学
立教大学 異文化コミュニケーション学部教授

東京生まれ.米ウエストバージニア大学卒業, 同大学院修了, 立教大学大学院博士課程修了, 博士. 社内通訳者・実務翻訳者を経て、最近は翻訳通訳研究に没頭する. 『翻訳通訳学の新地平』(共著・分担執筆), 『よくわかる翻訳通訳学』(分担執筆)など.

『デモクラシー・ナウ』のコンテンツに字幕を付与するというプロセスは、認知的に深い処理が要求されるので、高い学習効果が期待されます。そのため、コンテストに参加することで得られる「学び」は大きいと考えられます。教育的意義も大きいです。このコンテストの機会を活かし、日本のメディアにない視点と翻訳力を磨きましょう。

篠原有子(SHINOHARA Yuko):視聴覚翻訳研究、字幕翻訳者

秋田県生まれ.秋田大学卒業.立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科博士課程修了、博士(異文化コミュニケーション学). 字幕翻訳の映画作品多数。単著に『映画字幕の翻訳学』、分担執筆に『意味をすくいあげて-通訳者と翻訳者の終わりなき挑戦』など.立教大学・神戸市外国語大学他非常勤講師。

「デモクラシー・ナウ!」は世界の様々な出来事を市民の目線で取り上げている優れた独立報道番組です。本コンテストに参加することで、ニュースについての知識が深まるだけでなく、字幕翻訳の醍醐味を実感できると思います。貴重な翻訳実践のチャンスに、皆さんの参加をお待ちしています。

中野真紀子(NAKANO Makiko):
デモクラシーナウ・ジャパン代表

同志社大学,英国エセックス大学比較歴史学修士,外資系企業調査部を経て翻訳著述業.思想家エドワード・サイードの自伝や評論.ノーム・チョムスキーのメディア論や中東論などの書籍のほか,映画『チョムスキーとメディア』や『アウト・オブ・プレイス』の字幕担当.

デモクラシーナウ・ジャパンは2007年から番組の日本語版ウェブサイトを運営しています。このサイトは様々な方々が参加し、みんなの協力で続いてきました。日本語字幕版の制作に参加することによって、国内メディアにはない視点から現代の事象を捉えることができます。責任ある「報道」のためには、単に日本語にするだけではなく、自分で情報を探し、背景や事実関係の確認をすることが不可欠です。また、字幕で効果的に伝えるには大幅な言葉の圧縮が必要なので、内容の深い理解と的確な日本語の選択が鍵になります。そうして得た知識をきちんと伝達することによって、現実社会にささやかな貢献をすることもできます。デモクラシーの担い手になる、社会意識の高い自立した思考の持ち主を育てるために、字幕翻訳コンテストは格好の教材だと思います。