GMの金のなる木 ブラジルの森林から見るカーボン取引の矛盾
地球温暖化への対策が生み出した新手のビジネスに注目しましょう。温暖化を防ぐためには世界全体が協力して温室効果ガスの排出を削減しなければなりません。各国の掲げる削減目標を達成するための決め手とされるのは、京都議定書にもりこまれた「排出量取引」(キャップ・アンド・トレード)制度です。これは国や企業ごとに排出量の上限(キャップ)を定め、その枠を超えて排出してしまった分は、排出枠が余っている国や企業から権利を買い取る(トレード)仕組みです。排出量取引はすでに1500億ドル市場に達していますが、細かい規制の整備はまだこれからです。 こうした中で、CO2を吸収する森林がカーボン・ビジネスの鍵となる商品になりました。世界の温暖化ガス排出の5分の1を占めるとされる伐採を防ぎ、森林を保護すれば、他のところで起きたCO2排出を相殺できるからです。企業は削減目標の未達分を、どこかよその森林の保護によって相殺することができます。つまりアマゾンの熱帯雨林を保護すれば、これまでどおりガスを排出し続ける権利を買い取ることができるのです。でも、そんなのどうやって数値化し、値段を決めるのでしょう? カーボン取引の実態はどんなもので、森林地帯に住む人びとの生活にどんな影響をあたえているのか、マーク・シャピロ記者が、ブラジルでの取材をもとに報告します。ここではゼネラルモーターズやシェブロンなど世界最大の環境汚染企業が、「森林保護」の名の下に森林と共に暮らしてきた地元住民を強制的に排除して、CO2排出の権利を手に入れています。「地球上で最もカーボン排出の少ない人々が、最大の汚染企業によって排除される」排出量取引のあきれた実態をごらんください。(中野真紀子)
★ ニュースレター第26号 (2010.3.10)
*マーク・シャピロ(Mark Schapiro) サンフランシスコにある調査報道センターCenter for Investigative Reportingの編集委員
字幕翻訳 川上奈緒子/校正:永井愛弓 全体監修:中野真紀子・付天斉