アルンダティ・ロイ オバマの戦争、貧困、マオ派の抵抗運動を語る
アメリカ合衆国史上初の黒人大統領バラク・オバマ。その生い立ちからマイノリティや市民の権利を擁護すると期待されていたオバマ大統領が「ブッシュと大差ない」と言われ始める大きなきっかけの1つとなったのが、ブッシュ大統領から引き継いだアフガニスタン戦争の拡大政策でした。インドの著名作家、活動家アルンダティ・ロイがオバマ大統領の外交政策、インドで起きていることを語ります。
ロイは、「オバマは米国の大統領が関わったすべての戦争犯罪に加担した」と迫ります。「米国はベトナムもイラクもアフガニスタンも勝てなかった。それなのにオバマはアフガニスタンの戦争をパキスタンに拡大し内戦状態を招いた」。その影響はカシミールの領有でパキスタンと対立するインドにも及び、両国の関係をさらに緊張させています。
一方で世界最大の民主主義国家を自称するインド政府は、インド中央部に広がる森林地帯の鉱物資源の開発のために、部族民の先祖代々の土地を奪い、畑を焼き払い、殺害しているとロイは言います。それはインドのシン首相が「国内治安に対する最大の脅威」と決めた「マオイスト」掃討が口実です。まるで、同じく民主主義国家を標榜する米国が「テロとの戦争」の名のもとに中南米、イラク、アフガニスタン、パキスタンなど世界各地で市民を殺害してきたことと似ているのではないでしょうか。
インドは1947年英国から独立後、インド国内に存在する民族・宗教・言語などを異にする多くの集団の権利と平等を守ることを目指したインド憲法を作りました。その前文に謳われているのが、インドは「政教分離の社会主義民主共和国となることを厳粛に決意する」という文言です。
しかしロイは、「インドでは憲法上の権利を要求しているのが『テロリスト』で、憲法を踏みにじっているのが政府です。政府に憲法を守る気がないのなら、いっそ憲法前文『政教分離の社会主義民主共和国』は『企業とヒンドゥーを奉じる属国』に変えてしまえばいい」と手厳しく語ります。(桜井)
*アルンダティ・ロイ(Arundhati Roy) 多数の賞に輝くインドの作家でグローバルな不正と戦う活動家としても名高い。最新の著作はField Notes on Democracy: Listening to Grasshoppers(『民主主義フィールドノート:イナゴの襲来に耳をすまして』)
字幕翻訳:桜井まり子/全体監修:中野真紀子