『陽だまりの時』ジョン・セイルズ監督に聞く
米国独立映画界のベテラン監督で脚本家のジョン・セイルズへの1時間インタビューです。1979年の『セコーカス・セブン』でデビューして以来17作品を監督してきたセイルズ監督。2011年夏、まずフィリピン、続いて米国で公開開始された第17作目の長編映画『アミーゴ(原題)/Amigo』(日本公開未定)の題材は米比戦争(1899年~1913年)。ハワイ併合(1893年)や、「キューバ解放」を口実にした米西戦争(1898年)とともに、現在に至る米国の暴力的な対外膨張戦略を決定的なものとした事件です。映画では白人至上主義者によるノースカロライナ州のクーデター、映画産業の勃興など、広範な題材に取り組んでいます。セイルズ監督は、O.ヘンリー賞を受賞するなど、小説家としても高い評価を受けていますが、『アミーゴ』公開に先立ち、2011年5月に同じ題材で千ページ近い大河小説A Moment in the Sun(『陽だまりの時』)を発表しました。
ハリウッドの主流から距離を置き、学生運動・人種差別・労働運動・性的少数者・政治腐敗など、興行的にタブーとされる題材を積極的に取り上げてきたセイルズ監督が、新作映画と小説を中心に、過去の監督作品の名場面を交えてデビュー以来の経験を語ります。視聴者からの質問に対して、芸術家あるいは活動家として正気を保つためには「自らの役割を知る」ことが大切だと答えるセイルズ監督。「社会は良い方向に動いており、より良い世界を作るためには草の根の力が必要で、例え容易にはつたわらなくとも、対話の努力をすること自体に意味がある」と熱く語ります。(斉木裕明)
*ジョン・セイルズ(John Sayles)
1950年、ニューヨーク州出身。独立映画伝説の巨匠ロジャー・コーマンのもとで映画制作に携り、自己資金で制作した『セコーカス・セブン』で1979年に監督デビュー。自作の脚本・監督だけでなく、他の監督の作品にも多くの脚本を提供し、また脚本のリライトでも高い評価を受ける。俳優としての出演作も多い。1991年の『希望の街』で東京国際映画祭のグランプリを受賞、1989年の邦画『ウンタマギルー』(高嶺剛監督)に出演するなど、日本との縁もある。
●主要監督作品
セコーカス・セブン(1979年)
ベイビー・イッツ・ユー(1983年)
リアンナ(1983年)
ブラザー・フロム・アナザー・プラネット(1984年)
メイトワン-1920-(1987年)
エイト・メン・アウト(1988年、未公開)
希望の街(1991年)
パッション・フィッシュ(1992年)
フィオナの海(1994年)
真実の囁き(1996年、未公開)
最果ての地(1999年、未公開)
サンシャイン・ステート(2002年、未公開)
カーサ・エスペランサ~赤ちゃんたちの家~(2003年)
●脚本を提供した主な作品
ピラニア(ジョー・ダンテ監督、1978年)、ハウリング(ジョー・ダンテ監督、1981年)、アポロ13(ロン・ハワード監督、1995年、クレジットはなし)、ミミック(ギレルモ・デル・トロ監督、1997年)
●邦訳のある小説
ビンボーズの誇り(筑摩書房、絶版)
字幕翻訳:斉木裕明/全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗