1970年代のCIA告発者が語るスノーデン事件の「本当の問題」
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エドワード・スノーデンによる国家安全保障局(NSA)の違法監視プログラムの暴露を受け、政府は火消しに懸命です。キース・アレグザンダーNSA長官が議会で証言し、NSAの通信データ収集によって数十件のテロが防止できたと主張しました。長官は監視活動についての国民への説明も大切だが一定の秘密は必要だと述べました。一方マスコミでは内部告発の信用を貶めようとするネガティブ・キャンペーンも始まっています。40年前に勇気をふるって政府機関の権力濫用を公表し、結果的にCIAやFBIの暴走を食い止めることに成功した内部告発者クリストファー・パイルは、現在の事態をどう見ているのでしょうか?
米国では1970年代半ば、政府の諜報機関が行っている違法な活動と一般市民の権利の侵害が大きなスキャンダルとなり、フランク・チャーチ議員の率いる上院特別委員会(チャーチ委員会)が捜査に乗り出しました。数年ごしの大規模な調査によって、CIAが海外で行っている他国の要人の暗殺や、国内でCIA・FBIが行っている左派組織への潜入と破壊工作、市民の政治活動の監視など数々の職権濫用が暴かれ、行き過ぎた諜報活動に歯止めをかけるためのFISA(外国諜報活動監視法)が1978年に成立しました。このきっかけをつくったのは、元陸軍教官クリストファー・パイルによる米国政府の違法な国民監視活動に対する告発でした。
チャーチ委員会の時代と比較して、サイバー空間で展開される現代の諜報機関の情報収集能力や威力はけた違いに増大しています。それと並行して進展している重要な変化は、政府機関の諜報活動への民間企業の進出です。国家機密という極めて重要な分野が民間の請負事業者の利潤追求の種にされることに対しては、さまざまな懸念が生じます。税金の無駄遣いはもちろん、機密保持の面でも、責任の所在の面でも問題は山積です。「国家機密」の名のもとに、誰にも責任を負わない野放図な利権分配システムが国民のプライバシーを犠牲にしながら肥大化しているともいえるでしょう。クリストファー・パイルの言葉によれば「秘密主義とカネにまみれた腐敗した政治システム」こそが、スノーデン事件の背後にあるもっとも重大な問題です。(中野真紀子)
*クリストファー・パイル(Chris Pyle):陸軍の教官時代にCIAによる大規模な監視活動の存在を知り、退官後の1970年代初期に国内監視の実態をあばく記事を公表した。彼の記事がきっかけで、1975年チャーチ委員会による調査が開始され、外国情報監視法(FISA法)の創設に寄与した。
字幕翻訳:川上奈緒子 校正:桜井まり子 全体監修:中野真紀子