米兵たちが東京電力を提訴 原発事故の被曝による健康被害を訴える
2011年3月、東日本大震災が起こった直後に、米軍は被災地での災害救助・救援・および復興支援を目的とした援助活動を開始しました。一連の活動は「トモダチ作戦」と命名され、2万人を超える将兵に200機近い航空機、また24隻の艦艇が送り込まれました。それから3年後、作戦に参加して果敢に活動した海軍兵士や海兵隊員が、救援活動中の被ばくを理由に、東京電力を相手取って訴訟を起こしました。
告訴の詳細は、米軍が救助を開始した時点で原発のメルトダウンはすでに始まっており、米海軍が空母などを被災地に派遣することを東電が認識していたにも関わらず、大量の放射性物質の放出や、その時点での測定放射線量などの正しい情報を、東電が意図的に提供しなかった罪を問うものです。米国は当時、放射線の状況について問い合わせましたが、東電からは、「危険性はない」「すべては制御下におかれている」などの答えしか得られませんでした。原告である兵士たちは、トモダチ作戦参加後に、白血病、脳腫瘍、失明、不妊、出生異常など、多岐にわたる深刻な病状を発症したと主張しています。
米軍は放射能に関して十分な情報を得ていなかった、というのが今回の訴訟の前提ですが、情報公開法にのっとり原子力規制委員会が公開した資料によると、米軍は自ら放射能を測定することにより、震災から数日後にはその危険性を示唆する情報を持っていたということです。あまり日本のメディアでは取り上げられていない今回の訴訟ですが、今後どのような事実が明らかになるのかが注目されます。(永井愛弓)
*スティーブ・シモンズ(Lt. Steve Simmons):元海軍大尉。航空母艦ロナルド・レーガンに乗船中、福島第一原発事故の救援活動に従事。その後、深刻な健康被害を訴え、東京電力に対する集団訴訟に加わった。
*チャールズ・ボナー(Charles Bonner):原告団弁護士。
*カイル・クリーブランド(Kyle Cleveland):テンプル大学東京校社会学准教授。現代アジア研究所副所長。
字幕翻訳:小椋優子/ 校正:永井愛弓