黒人女性ブリー・ニューサムが南軍旗を自分の手で引きずり降ろした理由
2015年6月27日、晴れた空の下、サウスカロライナ州の州都コロンビアにある州議事堂に高々と掲げられていた南軍旗が黒人女性のブリー・ニューサムさんによって引き降ろされました。白人至上主義者である、ディラン・ルーフ(当時19歳)がサウスカロライナ州の黒人教会で銃を乱射し9名の尊い命が奪われるという残虐な事件が起きた10日後のことでした。
旗を引き降ろした直後、掲揚台から降りてきた彼女は、補助をしたジミー・タイソンと共に逮捕されました。有罪になれば最大で3年の実刑または5,000ドルの罰金です。それでも、彼女たちが行った行為を称える多数の声が上がり、すぐに保釈金が集められ釈放となりました。
彼女たちはなぜ、身の危険を冒してまで旗を引き降ろしたのか。この動画では黒人への日常的な警察の暴力にたまりかねた暴動や大規模な抗議運動が米国各地で頻発する中、何を思い、何を目指して立ち上がったのか、本人たちに直接話を聞いています。
動画の中ではまず、なぜ黒人女性である彼女がこの使命を担ったかについて背景が説明されます。奴隷として連れてこられたアフリカ人を祖先に持つ彼女にとって、南軍旗が象徴するものとは一体なんなのか。南北戦争の終結から150年の時を超え、今なお続く差別とは?声なき人の声を伝えるために起こした彼女の行動の原動力になったものは、キリスト教に基づく信条に他なりませんでした。
米国内に頻発する黒人主導の抗議行動に伴う店舗の破壊を緊急事態として加熱報道する反面、黒人教会をターゲットに頻発する放火やテロ行為にはメディアは振り向きもしない、とブリーさんは言います。
南軍旗が示すもの、それは恐怖と暴力の象徴である、そしてそれに屈することはもうしない、とブリーさんはじめ多くの活動家たちは強い意思を貫きます。しかし一方で、南軍旗は南北戦争を勇敢に戦った兵士たちを称えるものであると主張する人もいる現状。正しい歴史認識がなされない現代の教育システムにも責任があるという彼女の思いをぜひ聞いてみてください。(山田奈津美)
*ブリー・ニューサム(Bree Newsome)2015年6月27日、サウスカロライナ州の州議事堂に掲げられた南軍旗を9メートルのポールによじ登って引き降ろした後、逮捕された黒人女性。
*ジェイムズ・タイソン(James Tyson)ブリー・ニューサムが南軍旗を引き降ろすのを手伝った男性。ニューサムと共に逮捕された。
字幕翻訳:朝日カルチャーセンター横浜 字幕講座チーム: 東泉知佳・千野菜保子・仲山さくら・山下仁美・山田奈津美・山根明子 /校正:中野真紀子