ドナルド・トランプが撒き散らす肉食獣系略奪思考:女性への暴力根絶を訴え立ち上がる女たちのV-Day

2017/2/14(Tue)
Video No.: 
9
25分

性被害にあった女性たちがこれまでひた隠しにしてきた自分たちの声を明るみに出し加害者への責任を追及する動きが広がってきています。こちらの動画ではそんな女性たちの活動を勇気づけるであろう、女性に対する虐待問題に取り組む二人のゲストをお迎えして、現在の性暴力に対する米国の対応や今後どうなっていくのかということについて議論を行います。

発端となったニュースは2017年1月末に署名されたイスラム教徒が多数を占める7つの国民・難民の入国を一時的に制限するという大統領令でした。署名する際、トランプ大統領は「女性を守るためにも必要だ」と発言し、実際、大統領令の中には「他者への偏狭な行為や憎悪による行為を行う人を米国は認めない。(これには女性に対する性的暴力、およびその他の暴力行為が含まれる)」との文言もありました。

しかし、この発言をした大統領をはじめ草案を考えたスティーブ・バノン氏を含め中央政府内の複数の高官たちが女性への暴力で訴えられている事実を見過ごすわけにはいきません。しかもこの直後には性的暴力の削減を目指す事業を打ち切るのでは、という報告もあり、女性への暴力削減の道は一進一退の状況が続いています。

ゲストの一人、劇作家で『ヴァギナ・モノローグ』の著者、イブ・エンスラーさんは現在のアメリカの状況を「レイプ・カルチャーが戻ってきたようだ」と懸念を強めます。レイプ・カルチャーとは相手や周りの人間の同意なしに自分のしたいようにするという略奪的態度が蔓延する社会状態、つまり性犯罪を許す文化、性暴力を安易に行う社会の風潮のことを指しています。N.Y.の「ウィメンズ・マーチ」を例にとり、そのエネルギーとパワーを称賛する一方、女性の権利や中絶に関する議論を世界に広める活動を行うNGOへの援助を廃止することを翌日に発表したトランプ大統領への批判を展開します。

もう一人のゲストのクリスティン・シュラー・デシュライバーさんは、コンゴのV-Day(女性への暴力に反対する運動を行う世界的活動)責任者であり「喜びの町」というレイプ被害者のシェルターの代表をしています。スタンディング・ロックやその他のデモ活動で活躍する草の根女性リーダーたちを参考に、被害にあった女性が心と体を癒しながらも「痛みを力に」次世代のリーダーを育てる活動を行っています。デシュライバーさん曰く、環境問題と性暴力は根が同じ、とのこと。どちらも対象を「物」として扱い利用している行為であり分けて考えてはいけないのだと断言します。

選挙戦のさなかに「オクトーバー・サプライズ」として、ワシントンポストにリークされたビデオについてトランプ大統領は「ただのロッカールームトーク」と批判を一蹴しようとし、事態はいったん落ち着きました。しかし、これこそまさに「レイプ・カルチャー」。性暴力を容認してしまう現代の風潮に他なりません。

それでも女性を含むマイノリティの人権を取り戻す活動は前進している、とイブさんは言います。女性への暴力と環境問題を同じ根源の問題として考える斬新な切り口で議論を進める二人のゲストからは、悲観的な中にもこれからの未来へ向けて力強いエールが感じられます。 (山田奈津美)

*イブ・エンスラー(Eve Ensler):劇作家 『ヴァジャイナ・モノローグ』の作者。女性への暴力の根絶をめざす世界的な運動「V-Day」の創始者。

*クリスティン・シューラー・デシュライバー(Christine Schuler Deschryver):コンゴの人権活動家。V-Dayに参加。コンゴの性暴力被害者が共生する画期的な共同体「喜びの町」(City of Joy)の責任者。

Credits: 

字幕翻訳:デモクラシー防衛同盟
千野菜保子・仲山さくら・水谷香恵・山下仁美・山田奈津美・岩川明子
全体監修:中野真紀子